本文へ移動

リハビリブログ

RSS(別ウィンドウで開きます) 

最後の大舞台直前の骨折、手術、リハビリ

2021-08-04
スポーツ担当の秋田です。オリンピックが日本で開催され、毎日テレビで日本の応援をしていますが、どんな競技でも応援に力が入りますね(^^)/同時にコロナがどこまで影響してくるのか心配ですが、無事に開催されて一先ずよかったと思っています(^^♪
さて、今回紹介するのは、当院外来通院中の、某高校のやり投げの選手です。
競技歴は3年目で、高校総体県予選間近で肘頭疲労骨折を受傷しました。
 
肘頭骨折とは?
肘の裏にある肘頭という部分の骨折です。
肘頭骨折は直接肘をぶつけて骨折したり、肘の裏の筋肉に強く引っ張られることで骨折することが多いとされています。スポーツでは肘頭が疲労骨折することもあり、繰り返しストレスがかかることで骨折する場合もあります。骨の治りが悪いと予想される時や、スポーツに早期復帰を望む時に、手術療法を選択されることもあります。治癒には一般的に3~4ヶ月かかるといわれています。
 
やり投げの特徴
重量は男子の場合800g、女子の場合600gの比較的軽い棒状の投てき物をいかに遠くに飛ばすかを競う競技です。障害部位は、肘、肩、腰に多いと言われており、肘に関しては、内側側副靱帯損傷、上腕骨の上顆炎が多いとされています。
一連のやり投げ動作はスティックピクチャーのようになり、脚から最終的に腕へと力を伝えるため、下半身の影響も受けやすいとされています。赤丸が肘にストレスがかかるタイミングです。
症例紹介
やり投げの練習中に右肘に痛みが出現し、当院でレントゲンを撮ったところ、肘頭の疲労骨折が見つかりました。早期復帰を望み、肘の手術を受けて、リハビリが開始となりました。
術後間もなく、痛みがある中で、高校総体県予選を目前に控えていることもあり、なるべく骨折部にストレスをかけないように配慮しつつ、積極的な可能域訓練や筋力強化訓練、フォームチェックを実施しました。術後1ヵ月で大会本番があったため、術後3週間目からテーピングを巻いて少しずつやり投げを開始していきました。万全な状態ではないため、当日まで本人も不安だったと思いますが、結果としては見事県予選を1位で優勝し、その後東海大会を通過する事ができ、高校総体本戦に挑むことができるので、本当に良かったと思います!
骨折線が残存する中、東海大会では自身最高記録を出すほど、強心臓の持ち主なので、高校総体本番が楽しみです(‘ω’)
まだ本番まで少し時間があるので、可動域や筋力改善、痛みの除去に努めて、100%の力が発揮できるようにサポートできたらと思います。
 
 
リハビリ内容
①、②は肘でタオルを潰すトレーニング(初期~中期)
③腕立て伏せ(中期~後期)

足の小指の骨折

2021-07-14
こんにちは。理学療法士の長野浩充です。
オリンピックがもうすぐ開催されますね。前代未聞のコロナ渦での開催ということで、どんなイベントになるのか想像もつきませんが、不安半分、楽しみ半分といったところでしょうか。日本という国や人を信じたいと思います。
 
私は、ブログを書く時に、感動したスポーツ選手の名言を毎回紹介してきました。今日からは私が日々感じていることや大切にしていることを書いていこうと思います。
理学療法士は、患者様に触れ、会話し、治療をする仕事です。入院や外来、訪問の患者様、若年者から高齢者の方まで幅広い年齢の方と接しているのですが、最近よく思うのは、大事なことは今の状態がどれだけ悪いかということではなく、今の状態からどれだけ前に進もうとしているかだと思います。病気やケガをしてしまった方は、今現在の状態を受け入れられず、悩み、将来の不安を強く感じます。しかし、自分のためにそこから少しずつ必ず前を向かなければなりません。どんな重い病気やケガでも受け入れ、前を向いている方は良い人生を送れると思いますし、周りの人を幸せにする力があると思います。理学療法士は患者様が前向きな気持ちになるようにサポートしていく仕事でもあると感じています。
 
では今回の選手を紹介したいと思います。今回のケガは私もケガしたことのある足の小指の骨折です。

Oさん 10歳代女性 競技:薙刀(なぎなた)
診断名:第5中足骨骨折        担当セラピスト:長野

Q. 第5中足骨骨折とは?
A. 足の小指の骨折の事です。別名Jones骨折です。足を内側にひねったときに小指に急激な負荷がかかり骨折します。骨が疲労して骨折することもあります。骨折部位は血流が乏しく、骨がくっつきにくく、偽関節(折れた骨がくっつかずに異常な関節を形成してしまうこと)になりやすいだけでなく、いったん治っても再骨折しやすいという特徴をもっています。早期に確実な復帰を必要とするアスリートにおいては手術が選択される事が多いです。競技復帰にかかる期間は、保存療法では約3ヶ月、手術療法では約2ヶ月です。
 
リハビリ内容・セラピストの感想
Oさんは今回、薙刀(なぎなた)の部活中ではなく、学校の体育のバトミントン中に小指の骨を骨折しました( ゚Д゚) 骨がくっつき始めるまでギプス固定を2週間しました。そのため足首は硬くなり、お尻や太もも、ふくらはぎの筋肉はやせ細ってしまいました。ギプスが外されてからは骨のくっつきを妨げないように、ストレッチや筋力訓練を行い、徐々に柔軟性や筋力を取り戻していきました。
 
 
しかし、1ヶ月が経った頃に、部活中に足首を何度もひねってしまい、骨折部に痛みを再発させていました。レントゲン上、骨のくっつきがみられなかったため、部活動を痛みがない範囲で行うように指導しました。その後、痛みをみながら足首を捻らないような筋力訓練(写真①)やつま先からの踏み込み訓練(写真②)、ステップ練習(写真③)を集中的に行いました。踏み込み動作訓練は通常かかとから接地するのですが、薙刀の競技特性上、つま先接地で行ないました。
そして競技再開には必ず、骨折した小指が巻き込まれないようにするためのテーピングとアンクルクロスを徹底して行うように指導しました。写真はOさん自身でテーピングを巻いたものです。かなり上手になっています(^^♪(写真④)
現在は、多少の痛みは残存していますが、骨はレントゲン上でくっつきを認め、テーピングをして全力で競技に取り組むことができています。競技中に足首をひねることもなくなりました。今回、折れた骨がなかなか順調にくっついてこなかった原因として、大会が近かったため、筋力が回復していない状態で競技復帰を中途半端にしてしまったことが考えられます。パフォーマンスも低下していました。またOさんに足首をひねると再骨折をする可能性があるとしっかり伝えきれていませんでした。ひねるリスクがある状態(筋力が不十分な状態)で競技復帰をしてしまったことは良くなかったと思います。
 
今は骨折する前から痛みがあったシンスプリントのケアをしながら競技を続けている状態ですが、前向きに全力で競技に参加することができているためホッとしています。そして大会の報告を聞いたり、将来の話なども話したりするようになり保護者のような気持ちになっています。(笑) 良い形で、リハビリを終えられるように今後もサポートしていきたいと思います。
 

Q.当院のスポーツリハビリはいかがでしたか?
A. 早くケガを治すために、色々なトレーニングや対策を一緒に考えて下さり、安心して競技を続ける事ができたので、とてもよかったです。

膝蓋骨脱臼(手術例)

2021-06-05
こんにちは。理学療法士の長野浩充です。
最近、メジャーリーグの大谷翔平選手や、ゴルフの松山英樹選手、テニスの大阪なおみ選手、バスケットの八村塁選手など、たくさんの日本人選手が世界で活躍されていますね。同じ日本人としてパワーをもらえます(^^♪
 
さて、今回の私の気に入った名言は・・・
 
『努力すれば報われる?そうじゃないだろ。報われるまで努力するんだ』
 
サッカー選手のリオネル・メッシ選手の言葉です。この言葉には、一流の選手ならではのメンタリティーが詰まっている気がします。メッシ選手が歳を重ねた今でも活躍する姿を見せてくれているのは、人一倍の努力をし続けているからだろうと思います。
 
では今回、紹介する選手ですが、今回はスポーツ選手ではありません。走ることができなくなったBさんを紹介したいと思います。
 
 
Bさん 10歳代女性
 
診断名:反復性膝蓋骨脱臼術後     担当セラピスト:長野
 
Q. 反復性膝蓋骨脱臼とは?
A. 膝のお皿が通常ある場所から外れて(脱臼)しまうケガを膝蓋骨脱臼といいます。それを何度も繰り返してしまうという状態が反復性膝蓋骨脱臼です。生まれた時から、通常お皿がおさまるはずの大腿骨の溝の部分が浅かったり、X脚だったりすることで、お皿についている筋肉(大腿四頭筋)が強く収縮したときに、お皿が外へ引っ張られる力が強く働き、外れてしまいます。(図1)治療方法としては、ギプス固定などをする保存療法やお皿の動きを制御するための靭帯を修復する手術などがあります。おおよそ復帰には、保存療法で4ヶ月、手術療法で6か月かかります。
リハビリ内容・セラピストの感想
 Bさんは両足ともお皿(膝蓋骨)の脱臼を繰り返していて、痛みも強く、手術が必要な状態でした。脱臼しやすい原因として、レントゲン画像(図①)からもわかるように大腿骨の溝が浅いという生まれた時からの骨の構造的な問題がありました。また、偏平足やX脚という脱臼がしやすい特徴もありました。Bさんは日常生活にも支障があったために手術に踏み切りました。手術は成功しましたが、その後のリハビリは再脱臼しないために重要になってきます。お皿が脱臼しないためには、主に大腿四頭筋の1つである内側広筋の筋力、X脚を改善させるためのお尻の筋肉、偏平足を改善させるための足首や足指の筋力が必要になってきます。リハビリではこれらの筋肉を強化しています。図②はお尻と太ももと足首の筋肉を同時に鍛えるチューブスクワットです。図③は太ももの筋肉を鍛える強度の高い、いわゆる空気いすトレーニングになります。
定期的に筋力測定を行っています(図④)が、Bさんの真面目なリハビリ通院により筋力は順調に向上しています。(図⑤)
しかし、目標をランニング動作の獲得としており、ランニング動作をみてみると、足を着く位置が重心の真下であり、膝も曲がっていないため、太ももの筋肉をしっかりと使えていません。(図⑥)引き続き、筋力訓練の継続とランニング動作指導を行っていく必要があります。Bさんはスポーツ選手ではないですが、手術をされ、慣れない筋力訓練を真面目に取り組み、努力されています。Bさんのこれからの人生においてしっかり走れるようになるか、また大人になっても日常生活に支障がない生活を送れるかどうかは今の私たちのリハビリにかかっています。このリハビリの重大さを感じながらこちらも日々努力し続けていきたいと思っています。また、ダンスが好きで、部活動はダンスをしたいそうなので、ダンスの動きも取り入れて楽しくリハビリできればと思います。

成長期のケガ

2021-05-03

こんにちは。理学療法士の臼井友乃です。

 

今回は、平成28年から令和3年まで通院していたA君を紹介したいと思います。通院開始当初は小学5年生でした。この春めでたく希望高校に合格し、強豪野球部に入部しリハビリ終了となりました。

 

小学5年生時は、両アキレス腱炎で野球を続けながら治療しましたが、痛みは治まるどころか、その半年後には第5腰椎分離症が見つかり、腰コルセットを装着しなくてはなりませんでした。A君はこの5年間に、「アキレス腱炎」「腰椎分離症」「恥骨結合離開」「リトルリーグショルダー」「膝蓋大腿関節障害」「肘頭疲労骨折」と、ほぼすべての関節のケガを経験したと言っても過言ではないでしょう。

 

ケガの発生した状況のことを受傷機転といいます。「いつ、どこで、何をしていて、どのように」受傷したか、痛みが出現したかをA君のそれぞれのケガの受傷機転を表1として、まとめました。

表1のように、A君の受傷機転は、特別な出来事があったわけではなく、いつもの練習内容であっても発生していました。また、野球の練習のみでなく、体育の授業や運動会・持久走大会など学校行事の参加が加わり、運動量の調節が難しかったです。運動能力は高く、何事にも100%以上の力でやろうとする真面目なA君は、疲労が蓄積しやすかったことが想像できます。

 

成長期であったA君の身長は、142㎝から170㎝まで伸びていました。(図1)

また、筋力もほぼ2倍に増えていきました。(図2)

A君は、いわゆるPHA標準化成長速度曲線(図3)で言えば、小5~6年生がTake off ageにあたり、以後フェーズ2の成長期のスパート期に当はまります。

PHA標準化成長速度曲線は、身長の伸び度合で、発達段階を4つのフェーズに分けています。

スポーツ界では育成選手に対して、適切にトレーニングするために、その選手の成長度合いを把握するために利用されています。フェーズ1では基礎体力の養成、フェーズ2では全身持久力の強化、フェーズ3では筋力強化が有効とされ、フェーズ4では成人同様となりトレーニング制限がなくなるとされています。もちろん、各フェーズ中にそれだけを強化するわけではありませんが、能力をよりよく発達させるタイミングを利用します。

ケガの面からみると、フェーズ2は身長が急速にのびるため、骨と筋・腱の成長に不均衡が生じやすく、成長期に発症することで有名なオスグッド病などを引き起こしやすい時期です。また、フェーズ3では筋の柔軟性が急に低下することも報告されており、この時期までにしっかりとストレッチなど行う事がコンディショニングとして重要であることがわかっています。

 

「成長痛」は、成長期(幼児期、学童期、思春期)の子供が、特別な原因がないにも関わらず、足(特に膝)に痛みが生じる状態の総称(呼び名)として使われます。夕方から夜間に痛みが生じるケースが多いですが、朝には何事もなかったように痛みが消失することが多いようです。つまり、筋肉、関節、骨などには異常を認めません。それらに異常がある場合は、「成長痛」とは呼ばず、別のケガとして分類されます。例えば、骨端線が痛くなる骨端症が代表的なものです。成長期は、筋肉の伸びが骨の成長より遅いため、筋肉が骨についている部位を引っぱるような状態になり痛みが生じます。筋肉が骨についている部分は、成長軟骨板という組織でできており、骨を増殖しながら大きくする部分で、レントゲン上では骨端線と呼んでいます。この部分には、新しく骨になるための“成長軟骨”と“骨端核”とよばれる部分が存在し、骨の強度が弱いです。この時期に、激しいスポーツによるオーバーユース(使いすぎ)によるストレスが、痛みや成長障害を起こすことがあるのです。例えば、踵に発症するものを踵骨骨端症と呼び、別名シーバー病と言います。痛みや腫れが問題になり、「成長痛」と一括りにされることがありますが、きちんと病院受診を行い治療することが必要です。

 

A君は小学校6年生で「第5腰椎分離症」の診断がつきました。「腰椎分離症」は、腰椎の後方部分が疲労骨折するケガです。主に10代の成長期に多く発生しており、一番下の腰椎(第5腰椎)に好発します。

腰椎分離症は、早期発見により手術を避けて治療することが可能です。分離発生段階には、腰を反らしたときに現局した部分に痛みを感じ、スポーツ中やスポーツ直後に腰痛を訴えます。痛いまま放置していると完全に骨が折れてしまい分離が完成し、分離部は「偽関節」というグラグラな状態になり、腰の痛みのみでなく下肢にも痛みが出現することがあります。初期の段階であればコルセットなどで固定したり、対症療法として鎮痛剤を投与したりします。また、スポーツや負担がかかる運動は2~3か月程度中止することもあります。保存療法を行っても痛みが治まらない場合や神経症状がある場合には、手術的な治療介入を行います。

A君は、腰コルセットを装着し、野球練習を行っていましたが、分離部の骨は癒合しませんでした。

打撃練習時は痛みなく、投球時に腰痛が出現していたため投球フォームの動作解析をしました。(図4) 
振りかぶり動作から腰が反ってしまい、左足の接地時も右腰の反り(①の力)が強まり、ひねって(②の力)いました。腰の骨には、腰部の反りだけではなく、そこに回旋力(ひねり)が加わることで分離のストレスが強まります。腰椎分離症については、以前のブログにてトレーニング方法を紹介しています。気になる方は、見てほしいです。


 


以来、走り込み練習などが多くなったりすると腰痛を再燃させました。もちろん体幹筋のトレーニングは自主トレでもリハビリ時でも実施し続けていました。

分離症が治っていなくても日常生活に支障が出ることは少ないようです。腰痛を繰り返すことがありますが、強い痛みが出現しないよう、腹筋・背筋の強化などが大切です。また、上体をそらした時に痛みが生じることがあるので、背筋トレーニングは注意が必要です。分離した骨が前方に滑らないよう(分離症から分離すべり症に進展しないよう)、しっかり腹筋のトレーニングをすることがポイントになります。

 

この4月に野球の強い高校に入学し、帰宅時間が遅くなっているようです。まずは長い練習時間に耐えられる体力が必要でしょう。今までのリハビリで、ストレッチやトレーニングなどセルフケアの仕方を学んでいるので、きっと乗り越えて、チームの主力になってくれると確信しています。長い年月、A君の努力の持続は尊敬に値しますし、病院送迎してくれた親さんの協力にも脱帽しています。この通院が、逆に人生のプラスの経験になり、今後の活躍に一役担えることを願います。お疲れ様でした。

足関節捻挫を受傷したバスケットボール選手 ‐重心の高さに着目して‐

2021-03-29

理学療法士の小寺孝拓です。大垣中央病院ではスポーツリハビリといったスポーツでのケガに対して特化した外来リハビリを行っています。各曜日のスポーツリハビリにそれぞれ担当理学療法士が勤務しており、そのサブとして私は携わっています。まだまだスポーツ選手に対しての経験は浅いですが、知識、技術を向上させ、患者様と関わりながら成長していけたらと思います。

私は小学生の頃から、バスケットボールをしており、現在でも社会人のチームで趣味の範囲で続けています。高校生の時に足首の靭帯を損傷し、理学療法士の方にお世話になり、最後の引退試合では大敗しましたが、テーピングを巻きながらでも試合にでることができました。リハビリの先生にはとても感謝しており、自分も治療者側に立ちたいと思ったのがきっかけでこの職業を目指し、今仕事をしています。

 今日は、そんなバスケットボールでケガをすることの多い、骨折を伴った足首の捻挫を受傷した選手についての紹介をします。今回はバスケットボールの競技特性を中心に書きます。捻挫の詳しい病態については、以前のブログで紹介されているのをご覧ください。

 

〇選手紹介

B選手 20歳代 女性 バスケットボール選手

診断名:左足関節捻挫(初回)、左腓骨遠位端骨折

競技レベル:県リーグ

受傷機転および経過:

 バスケットボールの試合中、頭上を越える相手のパスボールをカットする際に左足着地にて捻挫をし、足首の外側の靱帯損傷と腓骨を骨折した。骨折に対して手術をした後、状態に合わせて徐々にリハビリを開始していった。

 

〇バスケットボール競技の特性

 ストップやジャンプ、切り返しなどを繰り返す競技であり、運動方向やスピードが変化する動作においては、瞬間的に足首に対して大きな外力が加わります。足関節捻挫は、バスケットボールにおける全外傷のおよそ25%を占め、練習中に21%、試合中に39%で受傷していると報告されています。具体的な動きとしては、ステップやストップ動作時に多く、過度な足部の外側荷重により、内側に捻るような力が加わることで足首の外側の靭帯を損傷します。さらに、外側へのストレスが大きいと靭帯が付着している腓骨の骨折が同時に生じます。

 足首の捻挫は、バスケットボール中に起こる外傷のなかでも比較的軽度なものと捉えられがちですが、十分な治療、リハビリテーションを行わずに競技復帰すると、足首の可動域制限などの後遺症に悩む選手が多いのが現状です。もちろん、足首のケガなので、そこを中心とした治療を行うのが基本となります。しかし、捻挫をしてしまった原因を探求することで、予防策を講じることができます。特に捻挫の発生しやすいステップ、ストップ動作には足関節のみならず、股関節、体幹の機能が必要不可欠で、足首以外のトレーニングを行い、バスケットボールの競技動作に必要な機能を獲得することが再発防止につながります。

 

〇評価、治療

 B選手は、足首の可動域に左右差がほとんどみられない状態まで改善し、リハビリを段階的に行うことで実際にバスケットボール動作を行えるレベルまできました。選手のステップ、ストップ動作の姿勢を確認したところ、足首の踏み込み角度の減少、股関節、膝関節の曲がり角度の減少と足部の過度な前方荷重といった特徴がみられました。下肢の筋力をそれぞれの関節において評価したところ、足関節はもちろん、特に股関節周囲の筋力低下が目立ちました。

 ステップ、ストップ、切り返し、ジャンプ、着地などはバスケットボールにおいての基本動作であり、それらはディフェンス時のサイドステップ、リバウンドやレイアップシュート後の両脚および片脚着地、ドライブ時の切り返しなど試合を通して頻回に行います。これらの動きに共通し、重要なのが低重心です。


左の写真はパワースタンスといってすべての動作の基本であり、シュートやドライブなど、次の動作の質を高めます。もちろん、右の写真のように足が伸びきって重心が高くても動作は行えますが、素早い動きはできず、何よりケガに繋がるリスクが高まります。

バスケットボールをしている人なら漫画のスラムダンクを読んだことがある人が多いと思います。登場人物にでてくる前年の覇者である山王工業高校キャプテンの深津(180cm)という選手は相手選手の宮城リョータ(168cm)をディフェンスするとき、頭の位置が相手よりも低いところまで腰を落としているシーンがありますよね。自分よりも10cm以上も身長が低い選手よりも低いというのはかなりの低重心ということです。ディフェンスはシュートとドライブインの両方を防ぐために前方にも後方にも対応しなければならなく、そのために重心は低くした方が良いのです。

 

 B選手は股関節や膝関節の筋力が弱いため、股関節と膝関節の曲げが少なく、高重心になっています。曲げを大きくすることで股関節、膝関節に関与する大きな筋肉が働きやすく、安定性が得られます。しかし、下肢の関節を曲げず、高重心だとこれらの筋肉が働きづらくなり、足首に負担をかける動作になってしまいます。これらの機能低下に対して、それぞれの関節周囲の筋力訓練や低重心を意識させたステップやジャンプなどの基本動作訓練を行いました。当初に比べると筋力は向上していますが、捻挫を再発しないためにリハビリを続けています。

 

 

 各動作の分析を行ったので紹介します。

 

〇ジャンプ動作

  • ジャンプした後に腰が反りすぎているため、腰のケガに繋がります。

  • 床から足が離れる際、床を蹴る力が弱いです。

 

〇ジャンプ後の着地

  • 股関節、膝関節の曲がりが浅く、さらに体幹が直立しているため、重心位置が高いです。着地時の衝撃吸収が不十分となり足部に負担をかけています。

  • 股関節周囲の筋力低下により、膝が内側にはいっており、膝の靭帯に負担をかけています。

 

〇クロスオーバードリブル(左から右への切り返し)

  1. 切り返す際に股関節、膝関節の曲がりが少なく、体幹も起き上がってしまっています。左膝が内側へ向いており膝のケガにもつながりかねないです。

  2. ここでは右への推進力を出すため、下肢を曲げて重心を落とす必要がありますが、B選手は曲げが少ないです。
     

  3. 体幹は前屈していますが、膝が伸びてしまい低い姿勢を保持できていません。股関節、膝関節で踏ん張れないため、足部に頼った動作になっており、再受傷のリスクがあります。

  4. 右手へドリブルチェンジしていますが、完全に下肢が伸びきってしまっています。これではディフェンスと接触した際にすぐにバランスを崩してしまいますし、相手を抜くためのスピードが得られません。



〇まとめ

 今回のような非接触型の捻挫受傷例では下肢や体幹などの筋力低下が生じているケースがあります。捻挫経験者やそうでない方も予防のために足首のみならず、股関節や膝関節、体幹の筋力トレーニングを行い、下肢を曲げた低重心で安定した姿勢を作ることが大切です。

医療法人社団 豊正会
大垣中央病院
〒503-0025
岐阜県大垣市見取町4丁目2番地
TEL:0584-73-0377
FAX:0584-73-8380

内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、消化器内科、消化器外科、循環器内科、泌尿器科、肛門外科、糖尿病内科、腎臓内科、リウマチ科

3
1
3
0
3
4
TOPへ戻る